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忘れていた風景

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紅葉ツアー



 朝になって窓を開けると、快晴だった。冷え込んでいたが、風はなかった。起きたのが午前六時半。急いでひげを剃り、サイトを開けたが、美里からのミニメールはきていない。
 ふたつの伝言に対してと、何人かの日記にコメントすると、七時半になっていた。
 荷物を持って待ち合わせの公園へ行くと、パールホワイトのスポーティセダンが見えた。
美里が車から出てバックドアを開けた。地味に紅葉した落ち葉が、数枚道路に落ちた。
「おはようございます。お待たせしました」中野は笑顔になった。
「おはようございますお父さん。お待たせされてませんよ」
眼を細める美里を見て、中野は安心した。
「今日もお父さんか。着いたばかり?」
「そう。どこへ行くか、決めた?」
「紅葉って、割と縁がなくてね、思いつかなかった」
 朝の散歩中の小型犬が寄ってきたので中野は逃げた。飼い主の中年女性が笑いながら謝った。
「じゃあよかったわ。ナビにセットしてあるから、その通りに行ってください……犬は苦手?」
作品名:忘れていた風景 作家名:マナーモード