忘れていた風景
山はぎっしりと樹が生えているだけ。どこへ行っても個性が感じられない。美しい草原さえ、なかなか見当たらない。写真だけでは関東と関西の違いさえ希薄である。東北地方の街並みと、九州の街並みが殆ど変わらない印象だったりもする。
午前十時から午後四時半まで眠った。窓が暗く見え、真夜中のような気がして中野は焦りを覚えた。
パソコンの電源を入れてから、また水割りのグラスを持ってきた。
「たくちゃんさんに伝言が2件届いています!」
開けてみると両方とも記憶にあるような、ないようなハンドルネームだ。
「山の写真に嬉しいコメントありがとうございました。良い一日をお過ごしください」
「お立ち寄りありがとう。また来てくださいね」
それぞれのマイページを訪問してから両方に対して返信した。
「素晴らしい写真でしたね。また感動的な写真をお願いします伝言ありがとうございました」
「明日も良い日でありますように伝言ありがとうございました」
マイページをクリックすると、
「たくちゃんさんにミニメールが1件届いています!」
中野の鼓動が激しくなった。血圧が上がっているかも知れないと、彼は思った。