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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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破天荒アリス!

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 ものすごい満面の笑顔を浮かべるアリス。さっきまで怒っていた人物とは思えないほどの変わり身の早さだった。アリスは『タダ』という言葉にも弱いらしい。
「だから、ここにあるお菓子も全部タダってことになるんだよ。どうだ、気に入ったか?」
「じゃあここにあるお菓子好きなだけ食べていいってこと?」
「おうよ、いくら食べてもなくならないからな」
「ホントにホント?」
「ホントにホント」
「うわぁ〜、うれしい〜v」
 この時すでにアリスの頭の中はお菓子のことでいっぱいになってしまっていた。
 キノコでできたテーブルと椅子。アリスは椅子に腰掛けてさっそく注文を取りに妖精がやって来た。
「ご注文は何になさいますか?」
「じゃあ、取り合えず……有りっ丈持ってきて」
「マジかよ!?」
 横でアリスの言葉を聞いていたパックは驚いて目を丸くしてしまっている。
「だって、妖精サイズなんだからどうせ小さいんでしょ?」
「とんでもない。おまえなぁ、さっき御菓子が並べられてる棚見ただろ? 妖精用の小さいのもあったけど、その横に大きいやつもあったろ?」
「そうだった?」
「ここにはなぁ、ホビットも食べに来るから人間が食べるのと同じくらいの大きさのもあるんだよ」
「ホビットってなによ?」
「小人のことだよ」
「小人? ならどうせ小さいんでしょ?」
「おまえ人の話聞いてないだろ?」
 アリスはパックの話など本当に聞いていなく、注文を取りに来た妖精に改めて全部持って来るように注文した。
 注文を取りに来た妖精は少し躊躇[チュウチョ]しながらも、アリスに言われるままに店の奥へと消えていった。
 しばらくして御菓子が次々と運ばれて来た。クッキーやケーキなど洋菓子が何人もの妖精によって運ばれてくる。その御菓子は全て人間の世界のものと形も大きさも変わらなかった。
 アリスは運ばれて来たケーキに手を付けて、口に一口運んだ。
「おいしい〜v」
 その味は人間の世界とは比べ物にならないほど美味しいものだった。
 川の流れのように止まることなく運ばれてくるお菓子を次から次へとお腹の中に納めていくアリスをパックは唖然としながら見ていた。
「ホントにこいつ人間かよ!?」
 パックがこう漏らしてしまうのも無理もない。今のアリアは人間掃除機、いや、人間ブラックホールだった。
 長いこと止まることなく動いていたアリスの手が、紅茶を飲み干したところでやっと止まった。
「ふう、腹八分目っていうからね」
「ぶはっ!」
 パックは思わず口の中の紅茶を吹き出してしまった。
「な、なんて言った!? これだけ食べて腹八分目だって!?」
「そうよ、今ダイエット中だしね」
 アリスの身体――特にお腹をじーっと見るパックの表情は人間ではない別の物体を見る眼差しだった。
 ケーキだけでも80は食べていたハズなのに……それはこの身体のどこに消えたのだろうか? 有名な科学者たちにも解けない謎だろう。
「この幼児体型の身体のどこに消えたんだ?」
 しみじみ頷きながらパックはなおもアリスのお腹を見ていた。
「幼児体型は余計よ!!」
 アリスは自分の幼児体型をすごく気にしていた。だが、元の世界ではそれが人気を呼んでいたのだが……。
 深く息を付きながらお腹を擦り、アリスは空を見上げた。綺麗な青い空だなっと思っていた刹那、突然、空は重々しい曇り空に一変して轟音が鳴り響き辺が薄暗くなった。
 どうしたのかと妖精たちは一斉に驚き慌てふためき、走り回ったり、震え上がる者もいた。
「ガーッハハハハ!!」
 そして、大きな笑い声と共に空中にフォログラム映像のような巨大な怪物の顔が写し出された。
 怪物は褐色の肌をしていて、頭には羊のような角を生やしていて、鋭く尖った牙を口元から覗かせていた。
「な、なにがあったの!?」 
 アリスは急いでフォログラム映像が映し出されている真下に走り寄った。
 近づくと、より一層怪物の巨大さと不気味さが伝わって来る、のが普通の反応だが、アリスにはこんな怪物どうってことなかった。
「あんたなに者?」
 上空の顔は小さなアリスを睨みつけるようにして大きな口を開いた。
「オレ様は、とても恐ろしくて強い怪物の王様だ」
「あんたね、自分でとても恐ろしく強いなんて言うなんて、ホントはすごく弱っちいんじゃないの!」
 確かにアリスの言うこともありえる。自ら『とても恐ろしく強い』などと言うなど、信憑性に欠ける発言だ。
「お、オレ様が弱いだと、そ、そんなこともう一度でも言ったら、お姫様がどうなっても知らないからな!!」
 と凄みの効いた声で脅し文句を言ってはいるが、気持ちが動揺して焦った感じがあからさまに伝わって来る。アリスも言うとおり弱っちいのかもしれない。
「あんたね、焦ってんのが丸わかりなのよ。あー恥ずかしい。悔しかったら、こんな映像なんかじゃなくって、ちゃんと掛かって来なさいよ、いつでも相手してあげるわよ」
 と言ってアリスは尚も強気で、やれるもんなら、やってみろと言った感じで、あっかんべーを怪物にしてやった。
 それを見た怪物は、慌てたようすで、
「と、とにかく『星見の塔』で待ってるからお姫さまを助けに来い」
 と言って、怪物の映像は重々しい雲と一緒に逃げるように消えてしまった。
 アリスはこれは自分に対する挑戦だと受け取り、仁王立ちで拳に力を込め、お姫さま救出に対しての熱い闘志をめらめらと心の中で燃やした。
 だが、熱はすぐに消火された。
「……あれっ?」
 ふと、アリスの頭に考えが浮かんだ。
 自分の読んだ絵本にこんな展開は無かったような気がする。妖精の里に突然怪物が現れるなんて、絶対絵本の中では描かれていなかった。ましてやあんな怪物なんて出てきた覚えなんてなかった。
「夢だし、別にいっか」
 案外結論はすぐに出された。アリスにとってこの世界で起こることは全て『夢だから』で解決されしまう。
 お姫様救出を一時は意気込んだアリスだったが、長老も言っていたように今日はこの里で休ませてもらい、次の日の早朝に星見の塔に行くことにしようと思った。
「……あんな変な怪物相手にしたら、お腹空いちゃった。また、ケーキ食べに行こ」
「マジかよ!?」
 アリスの横で一部始終を見ていたパックは唖然とした。またケーキを食べるなんて信じられなかった。それにあのやり取りとお腹が空くのは別問題だと思ったが、それはとり合えず心の中に留めて言わないことにした。