RED+DATE+BOOK04
今となっては只、後悔のみ。
もっと、何か言い方があった。
「可奈人にも謝らなくちゃ・・・。」
自分が言われたら、と考えて思考を閉ざした。
「じゅんぺ、ちょっと電話するから先寝てて。」
「・・・分かった。もし、行くんだったら声かけろよ。」
「うん。」
純平は寝室に繋がる部屋に消えた。
一つ深呼吸をして、楠木可奈人のアドレスを開いた。
三度目のコールで通話は繋がった。
「も・・・もしもし?」
『っ・・・ごめんなさい!』
「いや。俺こそ・・・」
『違います・・・僕が酷いこと言いました。あんな・・・酷いこと・・・僕のエゴを押し付けた。』
しくしく泣いているのだろう、彼は時々詰まりながら必至に言葉を紡いでいる。
俺、毎回こいつの事泣かせてるな〜なんて思った。
「仲直り、しようぜ?」
はたして俺から言うことかは分からないが提案する。
『・・・僕を嫌いになってないんですか?』
嫌いになる?
ああ、俺もよく使った言葉だ。
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「お前こそ。俺最低最悪だろ?・・・ごめんな」
『確かに・・・亮君の考え方は最低だと思います。』
・・・そうですよね。
ええ、そうですよねー。
『でも僕はやっぱり亮君が好きなんです。だから、』
だから、その気持ちは否定しないで下さい。
最後の方は嗚咽によって消えていた。
「・・・うん」
ごめんなさい。
頭に浮かぶのは謝罪の言葉ばかり。
好きな人に拒絶されるのがどれほど辛いのかわかっていたのに俺はソレをやったのだ。
『ところで・・・亮君どこにいらっしゃるのですか?』
「あ!今純平の・・・1-2の木野下純平の所にいるんだ!で・・・今日はこっちにお世話になろうかと。」
『そうですね・・・亮君、お願いですので今日と明日は人目に付かないで下さいね。』
「え?何で?」
『先ほど新聞部の方々が尋ねてきました、ずっと居留守を使ってますからまだドアの外にいるかもしれません。』
「新聞部だぁ?」
『ええ。青木君との・・・見ましたか?』
「あ。うん。見せてもらった。」
『そのせいです。亮君を探してるんです、気をつけてください。』
「う・・・うん。」
この学校に新聞部なんてあるんだなー。
うわーゴシップ記事多そう。
亮が考えているものはあながち間違っていない。
『必要なものあるなら僕が木野下君に持って行きますから。』
「まさか!?そんな事しなくていい!」
何それ?そこまでするのか?
『もし、新聞部に何か聞かれても何も答えないで下さいね。本当に・・・色々書かれてしまうので。』
でも俺新聞部しらねぇし。
腕章でもしてくれんのかな?
「分かった。じゃあ・・・おやすみ可奈人。」
『はい、おやすみなさい。』
電話を切って一息つく。
電池あと一本だし。
でも・・・仲直りできてよかった。
本当によかった。
静かに寝室のドアを開ける。
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「寝るのか?」
純平はベットサイドのライトだけつけて本を読んでいた。
「お世話になります。」
ペコと頭を下げれて迷う。
「俺、どっちに寝ればいいの?」
「は?」
「だって・・・お前の同室の子が帰ってきたらどうすんだよ?あ。俺ソファー貸して貰えばいいや。」
「馬鹿か?帰ってこねぇっつーの。」
「そんな事言って帰ってきたら知らない奴が自分のベットに寝てるって結果になったらどうするんだよ!?」
「帰ってこねーだろ!」
「言い切れないだろ!だからソファー借りるな。」
「待て。ふざけんな。ソレでなくても今日は色々あったのにソファーなんかで寝させられるか。」
純平は見ていた本をパタンと閉じる。
表紙はお菓子の本だった。
「・・・・・・じゃ、俺じゅんぺーと寝ていいの?」
「は?」
「え?」
何故、疑問で返した純平がまた疑問で返される?
「狭いぞ。」
純平は一応そう言った。
いや、それ以外いえることがなかった。
「あ。じゅんぺーが疲れ取れないんじゃダメだよな。」
亮はポンと手を叩いた。
「あのソファー大きいし。どっちにしろ明日は俺、部屋からでないつもりだし。」
だから、疲れとかはない。と伝えようとしたのに純平は布団からでて亮の腕を取った。
「お前、壁側。」
そしてそのままベットに導かれる。
「いいの?」
「草はミニマムだからなんとかなるだろ。」
「・・・・・・。」
純平の頬が赤いのかオレンジ色の光で照らされて染まっているのか分からなかったが亮は純平を見上げて「ありがとう」と笑った。
亮は壁にピタとくっつき上を向いて眼を閉じた。
「おやすみ。」
空気に溶けた声に純平もおう、と返した。
純平は心の中で深い深いため息を吐いた。
既に寝息を立てている彼は肩をぴったり壁につけて固まるように寝ている。
亮は一般の高校生男児としては小柄だし、このベットは大きいから邪魔にはならない。
そう、このベットは亮と純平が二人で肩を並べるのに十分な位のスペースがあった。
しかしそれは問題ではなく。
一緒に寝る・・・か。
泣いた眼の回りは赤くなっている。
「純平は俺を好きにならないよね?」
そんな事を言うくせに誰からも好かれて誰よりも好かれる。
拒絶をしきれない子供。
その癖に自分の決めたテリトリーに入ると残酷なほどに相手を拒む。
それは、好きか、愛しているのかの違い。
純平は同じように目を閉じると深く息を吐いた。
「・・・い。ごめんなさい。ごめんな・・・さい。嫌いになら・・・で。」
零された言葉は夜の光に溶け込んでいった。
後、一日と半日はみんなの薦めで部屋に篭りっぱなしだった。
新聞部には見つかることも無く(帰りの移動では少し接触したが)他の嫌悪の眼に晒される事も無かった。
みんな尋ねてきてくれて楽しかったし暇はなかったけど。
俺の林間学校は半分以上ホテルの部屋で過ごすというあんまりなもので終わった。
作品名:RED+DATE+BOOK04 作家名:笹色紅