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RED+DATE+BOOK01

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前略、佐藤恵様。

桜も既に散っちゃってる今日この頃。

俺、齋藤亮はこの学校を転校することに決まりました。

思えばお前と会ったのは物心着く前・・・引っ越してきた俺に仲良くしてくれたのがきっかけでしたね。

ええ・・・あの日あの時あの場所で俺のケーキを横取りしたことは墓に入っても忘れないでしょう。

そんなんで腐れ縁で今日までつるんできましたがそれももう出来なくなります。

恵のことをメグミちゃんなんて言ってからかったりもしましたがそれもいい思い出だと思って笑ってく

ださい。

では、安らかにおやすみなさい。

拝啓 齋藤亮





「・・・で何コレ?」

俺のむかえにいる男は紙をピラリとつまんでこっちに向けた。

「何って・・・お手紙?」

「そりゃ見れば分かる。つか、俺死んでんの?」

金色の髪をした俺の親友、佐藤恵[サトウケイ]はへらりと笑いながら机の上にソレを置いた。

「なんかシメが良いの思いつかなかったんだよね~。」

だって手紙なんか書いたの初めてだし。

前略の意味だってよく分からないし。

同じようにへらりと笑って返してやると恵は静かに俺を呼んだ。

「亮・・・。」

わぉ、メグミちゃんにっこり笑って男前ね☆

なんて言葉を言う前に頭部に鈍い衝撃。

「いっ!!殴ることはねぇだろ!殴ることは!!」

「うるせぇ阿呆。お前が死ね。」

「っーか突っ込む所は其処かよ!?他に大事な所があんだろ!?」

ズキズキと痛む頭をさすりながら俺は再び恵に紙を突き出した。

眉間に皺を寄せて再び文字を辿る。

「・・・転校・・・?」

「そう。」

一番突っ込んで欲しかった言葉がようやく聞けて俺はニンマリと返事をする。

「今更?何でだ?」

今更・・・というのは現在が入学式を2ヶ月ほど前に終えた時期だからだ。

今年無事、高校入学を果たした俺は友達作りやら新生活やらにやっと慣れてきた時に転校なんて自殺行

為はまずしない。

普通ならば入学式の季節・・・すなわち桜が咲いているときや学期の節句に編入をするのだ。

それでも転校しなきゃいけないのは・・・

「杏那が生まれただろ~?そしたらオヤジの父親が戻って来いって言っててさ~。」

杏那とは今年の冬に生まれた俺の妹。

「じゃあ・・・認めてもらえるんだな。」

「そういう事。」

何故、妹が生まれたことによって転校なんかしなきゃいけないかっていうと。

俺の両親は出来ちゃった結婚だった。

当時17歳だったおふくろの腹には既に俺がいた。

おふくろは出来たってわかってから直ぐに生むことを決心したんだけどソレを許さない者がいた。

それがオヤジの父親。

俺のオヤジは世間一般に言われる良いところのおぼっちゃんだった。

えーっと・・・御曹司っていうんだっけ?そんでもって長男。

で、オヤジもおふくろもその時はまだ学生。

オヤジは子供が出来たって知ったら直ぐにおふくろの家に挨拶に行って自分の両親にも話をしたらしい



だけど名家の跡取りが一般家庭の女と出来ちゃった結婚・・・そんな事を許すはずが無い。

その時代は出来ちゃった結婚なんてあまりいいものとは考えられてなかったから。

オヤジはおふくろより一歳年上だったから法律的にはセーフだったんだけど世間的にはアウトだったと

いうわけだ。

おふくろとしては一人でも育てていく!って考えだったらしいけど(頼もしい!)まぁ、二人は愛し合っ

てたみたいで俗に言う愛の逃避行もとい駆け落ちをした。

それでもおふくろの両親が結構面倒見てくれたみたいで俺もこうして幸せに今まで生きている。

それが杏那が生まれた今になってオヤジの父親から便りが来た。

どうやらオヤジは母ちゃんとは連絡取ってたみたいで先方が是非可愛い孫を見たいってね。

何だかんだ言ってオヤジもおふくろも気にはなってたみたいだ。

そりゃ今更でも結婚と俺の存在、そして杏那を認めてくれたって事だから嬉しい。

それで出てきた話が一緒に住まないかという事。

あっちは金持ちだから家族が何人か増えても全然お構いなしだ。

家もでけぇし金もある・・・らしい。

オヤジとおふくろはその話には喜んだ・・・喜んだのだけど。

「別にお前が転校する必要あんのか?」

「・・・それがさー・・・」

引っ越すとなるとオヤジ、おふくろの仕事、そして俺の学校も変わるって事だ。

で、一番心配してるのが俺の事。

特に学校。

くぅぅ。マジいい両親ですよ、本当に。

俺の今現在通っている学校は小中高とエスカレーター式。

で、中学高校では男子校と女子校に分かれる。

俺は女じゃないから(あ。わかるって?)もちろん男子校だ。

そんで、エスカレーター式だから殆ど顔見知りばっかりだ。

俗に言われるマンモス校で外部生も転入はしてくるけど小学校から一緒の恵なんて10年の付き合いだ

、そりゃ顔知らねぇ方がおかしいって。

先輩後輩にも友達はいるし俺もこの高校を卒業する気満々だった。

だから両親は悩んでくれたわけ。

転校つったら仲のいい友達や部活仲間、先生や制度がガラってかわっちまうことだから。

そこで話に持ち上がったのが一人暮らし。

でも炊事洗濯なんて出来ない俺が一人暮らしなんてしたら部屋は樹海、餓死必須なんだ。

だからっておふくろやオヤジが残るって訳にもいかねぇだろ?

杏那の教育上もオヤジもおふくろも必要だし。

「だから俺も転校。こうすりゃ万事休すってな。」

「亮・・・お前・・・。」

「慰めんなよ。分かってんだろ俺の気持ちくらい。」

俺がそういうと恵は苦い顔をして押し黙った。

数秒の沈黙。

「何処に行くんだ?」

先に言葉を発したのは恵だ。

「それが・・・聞いて驚くなよ・・・篠宮学園なんだぜ。」

「篠宮!?」

「おうよ。篠宮。」

「あの・・・全国一の篠宮?」

「そう、全国一でホモばっかって噂の篠宮。」

「っ・・・・。」

あー。恵ちゃん?肩が震えてますよ?大丈夫ですか?なんて俺も同じように肩を震わせていたら堪えき

れないように恵が息を吐いた。

「あははははは!!!!」

「あ。やっぱ笑う?」

「お前・・・だって・・・!」

「まぁ・・・モーホーばっかって言うのはアレですがラッキーだとは思ってんだぜ?」

ようやく笑い終えたのかひぃひぃ言いながら恵は顔を上げる。

「所詮噂って事かもしんねぇしな・・・じゃあ亮とは敵になるかも知れねぇって事だな。」

「まぁ・・・多分今年は行くだろ、全国?」

「お前が抜けたら痛いと思うぜ。」

「先輩達と敵かー。嫌だなー。試合になったら穴ばっか狙ってやる。」

「・・・・・いつ行くんだ?」

「準備とか手続きとかするから二週間後くらいに。」

「大変になるな、二週間。」

「うん。」

「桜先輩とか自殺とかしちゃったりして・・・。」

「いや、そこまではしねぇと思うけど・・・桜先輩に泣かれんのは嫌だな~。」

「泣くだろ、あの人なら。それに泣くのは桜先輩だけじゃねぇぜ。」

「笑って送り出してくれると願ってます。今生の別れってやつでもねぇし。」
作品名:RED+DATE+BOOK01 作家名:笹色紅