おしゃべりな男
「あの、すみません、ちょっとよろしいですか?」
占い師は微笑みながら頷いた。
「お仕事のお悩みを抱えてらっしゃるのですね」
「あ、ええ、まあ」
本当は有里のことを聞いてみようと思った翔太だったが、
仕事の悩みもそれはそれで当たっていたので、
今回の異動に不満を持っていることを話した。
「大丈夫、きっと翔太さんでしたらまた良い仕事を掴むことが出来ますよ」
「そうでしょうか、このままでは埋もれてしまうような気がするんですが」
「心配いりません。きっと流れが変わります」
翔太はなんとなく勇気付けられたような気がした。
「ありがとうございました。少し元気が出ました」
占い師は再び微笑みながら頷いた。
翔太は料金を払い、駅に向かって歩き始めると、占い師が呼び止めた。
「翔太さん、私はお一人につき二つまでしか願いを叶えることが出来ません。
もうひとつのお悩みは、今度また」
翔太は「なぜ分かるんだろう」と不思議に思いながら小さく頷いた。