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恐怖の実話

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恐怖の実話



とにかく古い話である。随分前のことで、それがいつごろだったのか、正確には判らなくなった。カニさんが健在なのかどうか、それさえも今は判らないのである。
オートバイレーサーの「カニさん」のスポーツカーに乗せられて、私がそこを訪れたのは、五月の或る日曜日だったような気がする。カニさんは蟹のような顔の男だったが、腕と脚は二本づつの普通の人間だった。ただし、普通ではないところもあった。
彼の外国製の紅いスポーツカーは、時々道路を右側通行するだけではなく、一般道路を時速百五十キロで突っ走ることもあった。右側の助手席の人間、つまり私の顔は大抵蒼白となり、何度も自らが死んだことを確信した。
そこは大きなプレハブの建物で、中には数人の学生たちが待っていた。
当時大学生だった彼らも、今では五十前後の親父たちに違いなく、その中には子供がもうすぐ成人式だという人物も含まれているかも知れない。
当時、彼らは学生劇団を立ち上げようとしていた。私はカニさん経由で戯曲の台本と音楽を依頼され、そこへ赴いたのだった。
作曲したシンセサイザーの音楽を、私はカセットテープに録音し、手書きの原稿用紙を持参した。ステレオから流れ出したその音楽は、作者自身にも恐怖心を起させるような不気味さだった。
「いいですね。怪談っぽいミステリーか。登場人物が九人だったら、ちょうどいいなぁ」
 リーダー格のその青年は、背が高く、足が長い。将来は本物の俳優になりそうな風貌の男だった。
「メンバーは全部で九人ですか?」
「十三人です。残りの四人は照明とか、音響とかを担当させます」
 私は云った。
「四と九と十三という数字は、この劇にぴったりですね」
 それは偶然の結果だろうか。
そこに居たずんぐりとした体形の学生が云った。
「この建物の中で練習するというのも、因縁めいていますね」
「と、云うと?」
「ここでは怪奇現象が起きるからです。夜中に誰も居ない筈の二階から足音が聞こえて来るんです」
 カニさんが口を挟んだ。
「そうなんだ。俺もこの前ここに泊まったときにそれを聞いたよ」
作品名:恐怖の実話 作家名:マナーモード