扉を開けたメール
「花山君、久しぶりだね。元気そうじゃないか」
安岐は笑顔で云った。
「安岐さんも日焼けして、お元気そうですね。こちらは私の会社の営業部長の田川です」
「遠いところをわざわざお出かけ頂いて恐縮です。安岐です。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いいたします。田川と申します」
田川は名刺を安岐に渡した。安岐も名刺を出して田川に渡した。花山は名刺がないことを謝った。三人は着席した。
受付嬢のひとりが、盆にのせた三人分のコーヒーを運んできた。
「ごゆっくりどうぞ」
女子アナのような声だと、花山は思った。彼はドキッとした。その女性が若手女優の蒼井優に似ているような気がしたからだった。
(……ともみさんとはもっとメールのやり取りをするべきだった。彼女はどうしているだろうか)
花山は心の中でそう呟いた。
「ありがとうございます。早速ですが、わが社の製品カタログと、見積もりの一例をご覧ください」
田川は鞄から出したカラー印刷のカタログと、パソコンから出力したものを安岐の前に出した。