扉を開けたメール
受付嬢はふたりとも美人だった。
「いらっしゃいませ」
先ず花山が勤め先の社名を云ってから挨拶した。
「花山と申します。金曜日に購買の安岐課長とアポが取れてまして……」
「あちらのソファーでお待ちください」
にこやかな美女に促されて云われた通りにした。
三組ある応接セットのひとつに、花山と田川は向かった。巨大なガラス窓から、ふんだんに午後の陽射しが降り注いでいた。
「立派な会社だね。私もこういう会社の社員になりたかったよ」
「千人が同時に食事できる食堂が敷地の真ん中にあるんですが、値段が安いだけで、
おいしいと思ったことはありません」
花山は声を落としてそう云った。
「うちの会社の箱弁も美味くないけどね」
田川は顔をしかめた。
「でもね、あの弁当は、できたてなら美味いんじゃないかと思いますよ」
エレベーターの扉が開いて安岐という、長身の男が現れた。待っていたふたりは立ち上がって頭を下げた。