色の付かなかった夢
第1章 石畳の坂道
僕は今、小さな丘の上にあるセメタリー(共同墓地)に向かっている。
緩やかな石畳の坂道は、昨晩降った雨がまだ乾ききっていない。
葉を落とした木々は、もうすぐ来る春を待ちながら息を潜めている。
2月の半ばにしては暖かくて穏やかな気候に僕は感謝した。
小さな花束と一緒に持つ手提げ袋の中には、使いかけの絵の具箱が入っている。
管理事務所で区画を確認した。
F-27。
ここにお前は静かに眠っている。
僕の前を一匹の猫が臆病そうに横切った。
「もう少し待ってくれ、あと少しで花を供えるから」
僕は心の中でそう呟くと、足を少し速めた。
手提げ袋の絵の具箱がカラカラと鳴った。