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一期一会

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 高速道路から一般道路におりた。篠ノ井線を跨いですぐ、国道四百三号線に入った。聖高原駅の近くである。
 麻績というところは寂れた田舎町だった。廃屋になっている商店がある。歩いている人の姿が皆無だった。しかし、少し行くと開店したばかりという感じのコンビニがあった。
「寄って行きますか?」
「もうすぐ杏の里でしょう。いいわ」
 しのぶはまぶたに涙をためていた。
「駐車場が広いから、休憩して行きましょうか」
「いいから、気にしないで」
 早川はもらい泣きしそうになっていた。同性同名の、包容力のある男と、亡くなる前に会ってみたかった。
 四百三号線は、国道にしては交通量が少なかった。前後に走っている車がなく、対向車も来ない。山の中の道になった。急カーブが続く。ギアシフトを「四」にしてみると走り易くなった。ヘアピンカーブの手前では「三」にした。
 前方に遅い車が五台、固まって走っているのが見えてきた。時速七十キロ近くだった速度が四十キロ台に落ちた。暫くその六台目を走っていたが、急な登りで車線が増えたとき一気に五台を抜き去った。
「実力の違いが途方もないという感じです」
「安全運転を心掛けて」
作品名:一期一会 作家名:マナーモード