一期一会
「そうだよね。太ってないよね」
早川が笑いながらそう云うと、
「余計なこと云うなよ」
と、しのぶは云って早川を睨んだ。
いつもインスタントラーメンばかりなので、その味噌ラーメンは感動的に美味かった。
しかし、早川の気持ちは一変していた。しのぶは優しい性格の女ではないのだと、再認識していた。普通の女なのだと思った。早川は来たことを半ば後悔していた。
優しい女など、この世にはひとにぎりしか存在しない。一見優しそうで、その内実は打算だけで生きている。それが女という存在なのだと想う。
金の切れ目が縁の切れ目だと云ったのは誰なのだろう。まさに、それは至言である。
男の財産と地位と名誉。それこそが女の大好物なのだ。だから男たちは必死で勉強し、必死で働く。
朝食が済んで車に向かう途中、先程の販売員がしのぶを引き止めて云った。
「新商品の試供品なんですけど、良かったらお持ちください」
差し出されたのはアイスもなかが入っているという袋だった。