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一期一会

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酔った女



 諏訪湖のサービスエリアに到着したのは、午前七時半を少し過ぎた時刻だった。朝の諏訪湖は巨大な光の塊だった。この辺りにはパソコンサイトのマイフレンドが住んで居て、時々湖などの写真をUPしていた。いつも素晴らしい写真で、感心させられていた。同じ日本の国内に、これ程までに素晴らしい風景があったのかと、衝撃を受けるような写真ばかりだった。早川はデジカメを持ってきたが、撮る気にならなかった。名人の写真との落差を実感させられるだけだからである。
土産物売り場は色彩の洪水だった。しのぶとさえら姉妹はボールペンやキーホルダーなどの陳列コーナーでいろいろと物色しているが、やはり売店の中央にある野沢菜漬けなどが主力商品という感じだ。
野沢菜には想い出があった。ずっと前、白樺湖の日帰り温泉で早川は気さくな老夫婦と知り合い、沢庵漬けを御馳走になった。早川がその味を誉めると、老夫婦は手作りだと自慢した。そして、今は旬ではないので持ってきていないのだが、自家栽培の野沢菜の漬物を賞味してもらいたいものだと云った。また、野沢菜は収穫したばかりのものを油いためすると最高に美味いとも云った。早川は収穫の時期と老夫婦の家の住所を聞いて別れた。
その半年後、早川は諏訪湖から三十分程車で上ったところにあるその村を訪ねた。笑顔で迎えてくれた老夫婦の家の茶の間で、最初に出されたのが蜂の子を炒ったものだった。それは見たところハエの幼虫にそっくりで、早川はなかなか手を出せなかった。白い無精ひげの小柄な主人は執拗にそれを味見してほしいと云った。
作品名:一期一会 作家名:マナーモード