一期一会
すぐに電話は繋がった。あと三十分で迎えに行くということになり、しのぶはナビのセットを変更した。国道から離れて暗い道に入っていた。変電所や、工場が多い道を行く。コンビニだけが異常に感じられる程明るい。何もあんなに外も中も照明を明るくすることはないと、早川は見る度にいつも思う。
「ダウン症なんです。蒙古症ともいいます。みんなモンゴル系みたいな顔をしてるんです」
「知ってますよ。この前ね、ダウン症の人の乗客がありましたよ。歳は判らないけど、男性で、一人で乗ってきました。それがね、ちゃんと住所を云うんですよ。ことばは聞き取りにくいけど、近くに行くともうすぐ豆腐屋だとか床屋だとか、まともでしたね。感動しましたよ。療育手帳は持ってなかったんですけど、割引しました」
「ありがとうございます」
しのぶはそう、泣きながら云った。
「あの感じだったら普通の会社に勤められますよ。辺鄙なところの施設に押し込んでおくのはおかしいと思いますね。染色体が少し欠けているというだけでしょう。同じ心を持った人間を、どうして差別するんですか」
しのぶは嗚咽していた。