一期一会
意外に世間では常識になっているのかも知れない。
東京に戻った三日後に、タクシーに乗るときの落差を想うと暗澹たる気持ちだ。金曜日午後十時の国道は意外に交通量が多い。時速四十キロ台に落ちることもある。仕事で走る区域とは大分違う。
「ほかに乗せて行きたい人はいないんですか?」
早川はしのぶに対して下心がないことを明らかにしておきたかった。
「いいんですか?」
「いいに決まってるでしょう。忍田さんの車なんですから」
「そうですよね」
「ちょっと変な感じですけど、亡くなった早川さんの友達とか」
「考えたことは事実です」
「まだ時間の余裕がありますよ。ナビをセットし直すなら停めましょうか」
「……妹がいるんです。早川さんには、懐いてました」
「齢のはなれた妹さん?」
「三つ下です」
「じゃあ、結構いい歳ですね。失礼かも知れませんけど、懐いていたと云うよりは、親しくなっていた、のほうが……」