一期一会
「忍ぶ田んぼ、ですね。下から読んでも上から読んでも……」
「下はひらがなですから、そういうことはありません」
しのぶはやや憮然とした表情になった。
年齢は三十代だろうと、早川は思った。
「わたしの名前は……」
「早川学さん。タクシーの車内の表示を見ました。亡くなった友人が同じ名前なの……」
「同性同名ですか?!」
「ええ」
際限もなく、驚かされてしまう。
「……」
「字も同じなの……」
以前、早川がネットで検索してみると、会社を経営する同性同名の人物がいた。それがしのぶの友人かも知れない。
「そう……友達?」
改めて確認した。