-苑子〔そのこ〕-
苑子は28歳。親が残してくれた広大な敷地に建つ、6LDKの瀟洒な洋館にたった一人で住んでいる。
敷地内には、四季折々の花々が咲く花壇がその大半を占めており、以前はその香りと色が見る者の目を楽しませてくれていたが、いつの頃からか そこには一輪の花も咲かなくなってしまっていた。
枯れ木の山と化してしまった花壇を見つめ、苑子は幼い頃を思い出していた。
「あの頃はお母様と、よく花を摘んで遊んだりしたものだわ」
苑子の頬には一筋の涙が伝う。
しかし苑子は自分でもわからないのだが、その花壇に手を入れようという気にはならなかった。
苑子の両親が二人揃って蒸発したのが8年前。苑子はまだ二十歳になったばかりだった。
だが幸いなことに、苑子の両親は莫大な財産を残してくれていたので、彼女が生活に困ることはなかった。
当然捜索願も出したが、行方は分からぬまま7年経ち、仕方なく死亡届を出すに至った。そしてそれから一年。
苑子は半分以上諦めの境地にありながらも、もしかしたらひょっこり両親が帰ってくるのではないか、との思いも捨てきれずにいた。
敷地内には、四季折々の花々が咲く花壇がその大半を占めており、以前はその香りと色が見る者の目を楽しませてくれていたが、いつの頃からか そこには一輪の花も咲かなくなってしまっていた。
枯れ木の山と化してしまった花壇を見つめ、苑子は幼い頃を思い出していた。
「あの頃はお母様と、よく花を摘んで遊んだりしたものだわ」
苑子の頬には一筋の涙が伝う。
しかし苑子は自分でもわからないのだが、その花壇に手を入れようという気にはならなかった。
苑子の両親が二人揃って蒸発したのが8年前。苑子はまだ二十歳になったばかりだった。
だが幸いなことに、苑子の両親は莫大な財産を残してくれていたので、彼女が生活に困ることはなかった。
当然捜索願も出したが、行方は分からぬまま7年経ち、仕方なく死亡届を出すに至った。そしてそれから一年。
苑子は半分以上諦めの境地にありながらも、もしかしたらひょっこり両親が帰ってくるのではないか、との思いも捨てきれずにいた。