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鬼城 地球
鬼城 地球
novelistID. 15205
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L.H.B.  ~Left Hand is Black~

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じめじめする梅雨が明けて間もなく、僕の通う高校は夏休みへ入っていった。
三年生の僕には休みのではない夏休みになるかと思えば、それは別の意味で休みではない夏休みになっていった。

「仙ちゃん、仙ちゃん! 一緒に美術館行こうぜ!」
「美術館? なんで?」
「もー、俺が芸術大学目指してるの知ってるだろ? 俺の勉強に付き合ってくれって話だ」
「なんで僕なの? 僕も勉強しなきゃいけないんだけど……」
「あれ? 仙ちゃん就職じゃないの?」
「そうだけど、一旦大学に行ってから就職することになったんだ大学に行かない奴はろくな大人にならないって伸太郎さんが言ったから」
「自分が大学行かなかったからってそういう事言うかな……」
「自分みたい、もしくはお父さんみたいになってほしくないと思ってるんだよ」

 今僕を美術館に誘ったのは、瀬崎 悠介(せざき ゆうすけ)。
小学校からの友達で大親友とも言える。
悠介は、サッカー部に入っていて運動も抜群、その上に美術のセンスもずば抜けていた。
勉強は僕と同じそこそこな状態だけどね。

 そして、伸太郎さんというのは僕の名付け親で養父の槇 伸太郎(まき しんたろう)の事で、僕のお父さんと幼馴染だったらしく二人して高卒で警察に就職した。
今、そのせいで出世できず僕に大学に行かせようとしている。
「刑事は頭じゃない、経験で腕が決まる」って言ったのはどこの誰だったんだと言いたい。

「まぁいいよ、息抜きに一緒に行く」
「本当!? ありがとう仙ちゃん!」
「うん、わかったら課題終わらせようね……期末テストの結果が散々だったって言ったじゃん」
「テストなんていう言葉は知りません」
「卒業かかってるんだよ? 芸術大学に行くにしても、留年したら浪人よりきついかもよ?」
「仙ちゃんはいっつもきつい言葉しか言わないよな」
「悠介のためだよ」

 そう言った後、僕らは笑った。
いつもいつも、今日みたいな日が続く……そう、信じていたかった。
 
 だけど平和は簡単に崩れてくことなんて、僕はこの日ではなくずっと前からわかっていたのに……

 僕は、それから目を背けていた。