夏の恋
始まりは昨日と違う。が、最後は同じだった。それはリエを抱かずにはいられなかったからだ。
一週間後、二人は再びあった。
その日も暑かった。夜になっても風は殆どなく、蒸し暑かった。
タカシは駅前でずっとリエを待った。
何時間も待たされた。
駅前の広場では、外人や少年達が屯し奇声を発していた。
リエは黒い装いで現れた。服はぴったりと身体に纏わりついていて、豊かな肉体が窺えた。
直ぐにホテルに入った。
タカシはリエを裸にした。
「好きだ」と言って抱きしめた。
愛し合った後、傍らに身を横たえるタカシに向かってリエは呟いた。
「あなたはとても悲しい人ね」
タカシは心の中を見透かされたようでびっくりした。
「どうして?」
「寂しがり屋でしょ?」
素直に「君は鋭いね。でも、どうして分かった?」で答えた。
リエは、いや女は本質的に鋭いのだ。
「心の中が見えるの」とくすっと笑った。
リエは続けた。
「もうじき、夏が終わるでしょ? そしたら別れましょう?」
「どうして?」
「このまま続けても……あなたは大人でしょう? いつかは終わりが来るのくらい知っているでしょう?」とリエは背を向けた。
タカシとリエは歳がずいぶんと離れていた。タカシは結婚も離婚も経験した。今は結婚というものに夢を描いていなかった。当然、リエと一緒になることも夢見ていなかった。また、いつかは終わりが来ることは分かっていた。ただ、そのいつかが予想したくなかっただけだったが、その現実が来たのを悟った。
「そうだな」とタカシは独り言のように呟いた。
そのとき、タカシとリエの夏の恋は終わった。