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The El Andile Vision 第4章 Ep. 6

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 飛び込んでいく騎兵に向けて、イサスは手の中の刀を軽く一閃させた。
 一瞬、その刃先から緑色の光がきらめき、刃が長く伸びたように見えた。
 騎兵の喉から凄まじい悲鳴が洩れた。
 鮮血が飛散する。
 ざくり、と胸を縦に抉られた騎兵が地に倒れ伏していく。
 その上からさらにイサスは、容赦なく刃を突き刺した。
 その刃は……いつの間にか、長い一振りの剣に変化していた。
 そして、不思議な青い閃光をさかんに閃かせている。
 刀身にべたりと付着する血糊の色と混じり合い、青と紫の幻想的とも思える微妙な色を映し出している。
 どこかこの世のものならぬような光景。
 それが、その場の者たちに漠然とした恐怖を呼び起こした。
 騎兵たちは、ひるんだ。
 じりっと後退りかける。
 しかし、今度は『彼らの獲物』がそれを許さなかった。
 少年の凄まじい殺意のこもる切っ先が、忽ち次の標的に向かって襲いかかる。
 止むなくそれを受ける騎兵の剣を数閃の交叉で薙ぎ払い、心臓部に正確に刃を突き刺し、抜く。
 さらに倒れる前に、男の体を斜に切り裂く。
 血飛沫。断末魔の上げる恐ろしい悲鳴。
 逃げようとする騎兵の背に落ちる青い一閃。
 肉を幾度も切り裂き、血の海に沈める。
 さらに次の獲物へ。
 額をかち割り、両眼を貫く。
 覗き見えた頭蓋骨を打ち砕き、脳漿を叩き潰す。
 その執拗なまでに容赦のない、残酷な攻撃。
 他の騎兵たちの顔が見る見る青ざめ、彼らはすっかり逃げ腰になった。
 モルディ・ルハトですら、愕然とした表情を隠しきれなかった。
(……こいつは……一体、何者だ……?)
 モルディはかつて感じたことのないような感情……
 ……身の内がぞくりと震える冷やかな恐怖感が自分の中にひそかに生じ始めていることを嫌々ながら認めざるを得なかった。
 自分の足も、どうしたものか進んで前へ出ていこうとはしない。
 あろうことか、その足元は微かに震えてさえいるのだ。
(ええい、何をしているのだ、俺は!)
 モルディは、自分で自分を叱咤すると、ぐっと踏みしめる足元に力を入れた。
「おまえたちでは歯が立たん!どけ、俺が……!」
 彼がそう怒鳴りかけたとき、ふとイサスが顔を上げ、彼らを見た。
 返り血を浴びたその凄惨な面に、酷薄な笑みがゆっくりと浮かび上がる。
 モルディは再び足を止めた。その目が大きく見開かれる。
 これは――。
 さすがのモルディも、怯まずにはいられない。
 それだけの迫力が、そこにあった。
(何だ、これは……!)
 レトウ・ヴィスタも驚愕に捉われ、その場を動けずにいた。
 殺戮を心から楽しむものの表情。
 ――これまでも幾たびもそういう輩は見てきた。
 しかし、それでもレトウは、このイサスの表情はそれらとは根源的に異なるものだと思わずにはいられない。
 彼は突如、悟った。
 それは――人か、人でないかの違いなのだ。
 ――こいつは、今、人ではない。
 イサスでは、ない。
 こいつは……何だ?
 地獄から這い上がってきた悪魔だとでもいうのか……?
 何なんだ、この恐ろしい化け物は……?
(――畜生……どうなっちまってる。何が取り憑きやがったんだ――イサ……!)
 レトウは驚愕の目を大きく見開いて、ただ目の前の少年を見つめているばかりだった。

                                            (...To be continued)