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おとぼけタクシー

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おまけ・最新版



 2012年八月二日午前二時のこと。目黒駅から二十歳前後の若い女性が乗車した。
「ありがとうございます」
「西小山までお願いします」
「ドレメ通りからでよろしいでしょうか」
「それはどうでも構いません」
 何か反感を抱かせたのだろうか。
「わかりました」
 ちょっと不安な気持ちだ。何となくトラブルの予感。
 小生は数分前までオリンピックの衛星中継放送をラジオで聞いていた。乗車する寸前まで聞いていたのだが、オリンピックのラジオを聞きませんか?と云ってみようかどうしようかと迷っているうちに、目的地に着いてしまった。以前、乗客と共に落語を聞いているうちに意気投合し、話が弾んだことがあったのだが……。
「お待たせしました。料金は千七百円でございます」
「カードでもいいですか?」
「はい。カードでも大丈夫ですよ」
 カードリーダーに預かったクレジットカードを通したが、機械は反応しない。
「それ、反対側でしたよ」
「あっ、そうですよね。とんだギャグをぶちかましてしまいましたね!」
 バカウケだった。若い女性はおかしくてたまらないといった風に笑い転げた。
「アハハハ!ギャグだったんですか!」
 やり直したらすんなりと機械から伝票が印字されて出てきた。
「面白い運転手さんね!」
 乗客は笑いながら伝票にサインしてくれた。
 と、まあ、小生のドジは枚挙にいとまがない。
 おあとがよろしいようで……。





作品名:おとぼけタクシー 作家名:マナーモード