小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

『喧嘩百景』第6話成瀬薫VS緒方竜

INDEX|1ページ/10ページ|

次のページ
 

   成瀬薫VS緒方竜

 「なぁ、あんたと今の会長、ほんまはどっちが『最強』なんや?」
 緒方竜(おがたりょう)は生クリームの浮かんだココアを啜(すす)りながら、カウンターの中でコーヒーを淹(い)れている成瀬薫(なるせかおる)に声を掛けた。
 高校を卒業し、大学に通っている薫と彩子(さいこ)――内藤彩子は、授業のない時はよくここ――不知火羅牙(しらぬいらいが)の母親の茶店で手伝いをしていた。
 「何だよ、竜、まだそんなこと言ってんのか」
 薫は高校在学中、この喧嘩っ早い後輩に何度か勝負を挑まれたものだったが、その度に何やかんやと理由を付けて結局そのまま卒業したのだった。
 「なぁ」
 竜は強請(ねだ)るような目で薫を見上げた。
 「一賀(いちが)に決まってるだろ。あいつがこの辺りじゃ『最強』って呼ばれてたんだ」
 呼び名なんかどうでもええ。――竜は思った。確かにこの辺りで「最強」と呼ばれていたのは日栄(ひさかえ)一賀だった。「最悪」という形容詞のおまけ付きで。しかし、彼がこっちへ転校してきたとき、その日栄一賀もすでになりをひそめて一般の学生の中に埋没してしまっていた。――そうさせたんは誰や。竜が疑問を抱(いだ)くのはそこだった。
 「なぁ、あの性悪が何で大人しゅうしとるんや」
 一賀が「最悪」と呼ばれたのにはそれなりの理由(わけ)がある。そんな奴が何故大人しく「お茶会同好会」なんていう茶飲み友達グループの会長なんかに納まっているのか。
 「そりゃあ環(たまき)女史の人徳さ」
 薫は笑った。環女史――現お茶会同好会副会長。
 「惚(とぼ)けんなや」
 「惚けてなんかないさ」
 「あんた、あん人とやりおうたこともないらしいなぁ」
 竜は、お茶会同好会に入ってからも近隣校の奴らを締め上げて、解散してしまった「龍騎兵(ドラグーン)」――特に最後の総長、成瀬薫とナンバー2日栄一賀について調べて回っていた。
 「ああ、ああいう奴には近付かないに限るからな」
 竜は薫に解るように口を尖らせて眉を顰めて見せた。
 「あんた、負けんのがそんなに怖いんか」
 「負けるのは一向に構わないさ。結果の判ってる勝負はする必要がないだろ?」
 竜は渋い顔のままココアを啜った。
 「勝負なんて、やってみな判らへんやろ」
 「判るよ」