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気紛れな相談屋のようです 第一話「憎悪的ラブレス」

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 人波の向こうに、大きな看板を携えた建物が見えてきた。「○○駅」、と記してある。看板の上部には時計が取り付けられており、その短針と長針はそれぞれ八と十二を指し示している。いわゆる、通学、通勤時間だ。文字盤に記された十二個の数字と三本の針がまるで、急ぎなさい、早くしなさいと人々を急かし立てているようだ。
 ヨレヨレにくたびれた背広を着た男は、ハアハアと行きを荒げながら駅前の横断歩道を、人混みを掻き分け進んでいく。途中何度かすれ違いざまにぶつかったたが、男はそんなことは意に介さないようだ。
 一方向に、まるで何か動物の群れのように進む人々で埋め尽くされた入口。その奥には自動改札機が見える。ほとんどの人は、カバンからスイカやパスモを取り出し、改札を抜ける用意をする。しかし、男はわき目も振らず、改札脇にある掲示板へ足を進める。コルクボードで作られたそれは、様々な地域コミュニティの情報や、イベントのお知らせなどが無秩序に張り付けられている。そんな中、ともすれば見落としてしまいそうな程に小さく、粗末な紙きれが貼られている。

「怪異についてお困りの際は ×××-××××へ」

 わら半紙にサインペンで書きなぐってある。ずいぶんと前に貼られたものらしく、黄色く変色してしまっている。ほとんどの人はこのような紙切れが貼りつけられていることすら気付かないだろうし、よしんば気付いたとしても、いたずら書きにしか見えないこの文章。