三剣の邂逅
十年前の事件に加担しながらも、良心の呵責に耐え切れず、フレシアにすべてを伝えて死を選んだ男。彼のしてしまったことは許されることではないが、人としての誇りを最後の一線で踏みとどまることのできた人だった。
クローブの姉が愛した人だけあったのだ。
「そう……よかったね」
ライアは、心が熱くなるのを感じた。
最後の最後で、人の強さに触れ、世界に残る希望の光をかいま見た気持ちがして、胸がいっぱいになった。
「なんだか肩の荷が下りたよ」
クローブが大きく体を伸ばして微笑んだ。
「すべてお前のおかげだ。お前が過去と向き合ってくれたからこそ、見えたものだからな」
「そんな、私は何も……」
「誰のおかげか、判断するのはお前じゃないぜ。俺だ」
そう言って陽気に片目をつぶるクローブの姿は、ライアを素直にさせるに十分だった。
返す言葉は一つだけ。
「ありがとう」
カルーチアの国境へ続く一本道を、楽しげに寄りそう影が二つある。
二人の笑い声を、風が遠くに運んでいく。
今度の旅は、楽しいものになりそうだった。
(終わり)