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なんでも治す薬 一、

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一、


「あかんて! なんべん言うたら分かんねん! 」
「せやかて! うちん中でずっと寝よるのなんか……ゲホッ、ゲホッ、……つまらへ……ゲホッ、つまらへんもん! 」
「そないなこと言うたかて、ちゃんと寝よらな治らへんて、お医者さんも言うてたやろ」
「もうようけ寝たわ! せやのになんで治らへんねん! 」
 かなちゃんのうちでは、最近、ずっとこのようなやりとりが続いていました。
 というのも、かなちゃんが、季節外れのインフルエンザにかかってしまったからです。
 高い熱が出て、咳は止まらず、頭も痛くなりました。
 それも辛かったのですが、普段、元気に外で飛び回っているかなちゃんにとっては、外で遊べないことの方がよほど辛かったのです。
「めいちゃんとこ行きたいー! 」
「あーかーん! めいちゃんにうつしてもうたら、どないすんねん! 
 一緒に遊びたいんやったら、ちゃんと寝て、早う治すこっちゃわ」
「そんなあ! 」
 かなちゃんは、こんな寝てばかりの毎日が、耐えられませんでした。
 外に出たい、遊びに行きたい。そう何度もわめくかなちゃんに、お母ちゃんはとうとう、根負けしてしまいました。
「しゃあないなぁ。ほな、お母ちゃんと、お買い物行くかい? 熱もちょっと下がったみたいやし」
「うん! 」
 かなちゃんの表情が、ぱっと明るくなりました。
「せやけど、あんまし長うはおられへんで」
「うん、ええよ」
(やったぁ、やっと外出れる! )
 かなちゃんは、嬉しくて嬉しくて、たまりませんでした。
作品名:なんでも治す薬 一、 作家名:LUNA