「セックスアンドザシックスティーズ」 第十二話
「私はベイブリッジに行きたいなあ・・・赤レンガとかも見たいし、ダメかしら?」
「横浜か・・・いいね。女4人港町を散歩するってね。ナンパされるかも知れないよ・・・どうする?」
「典子さんは必ずそこなのね。楽しい事は一杯あるでしょ?買い物や風景やランチだってとっても楽しみだし、ねえ恵子さん?」
「美紗子さん、そうね。あなたの言うとおりよ。典子さんはちょっと病気に罹っているみたい」
「恵子さん!何の病気に罹っているというの?淫乱病?」
「自分で言ってる・・・可笑しい人。本当に声かけられたら着いて行くの?」
「相手次第だけど、かっこいい人だったらもちろんよ」
「どんな相手だかわからなくても平気なの?」
「恵子さんだって一夜で結ばれたんでしょ?そんなものよ恋なんて。考えて作り出すものでもないし、やってくるものを見逃さないようにしないといつまで経っても手に入れられないって思うしね」
「そりゃそうだけど・・・誰でもいいって言うことはイヤ」
「もちろんだよ、恵子さんみたいに縁があるように感じられれば最高だけど、ピンと来れば・・・それだけでいいの」
美紗子は二人の会話に入れなかった。自分には絶対に出来ないと考えていたからだ。ナンパされて着いてゆくこと自体があり得ないことだと決めていた。綺麗だとか、可愛いとか言われてもその言葉を信じたりは出来なかったのだ。
美紗子には秘密があった。
誰にも言えないし話したことも無い心の傷だ。若い頃はそれが原因で男性不信に陥っていた。いずれ話すことがあるかもしれないが、今はたとえここの三人にも言えない事であった。
作品名:「セックスアンドザシックスティーズ」 第十二話 作家名:てっしゅう