「レイコの青春」 10~12
田中角栄氏による日中国交回復の事業は、一定の成果をおさめました。
時の力を得た同首相による「日本列島改造論」の発表は、
高速の鉄路と道路を、全国に建設することで
経済を活性化させる効果を産みだしました。
これが後になって、地価の高騰を産み、バブル経済への土台ともなる
不動産業の台頭を生み出します。
地価が高騰を見せる中で、
陰りはじめていた景気は、ふたたび上向きに変わりました。
製造業では設備投資が活発となり、
勤労世帯には残業や休日出勤が増えます。
閑古鳥が鳴き始めていた夜の町にも、再度の活気が戻ってきました。
この頃から繁華街には、「ピンク」と称し
性的サービスのみを提供をする、「風俗」と呼ばれる
お店が登場をしはじめます。
時間制によって、安易な売春サービスを提供をするこの新しい風俗店は、
雨後のタケノコのように、またたくまに増えそのまま歓楽街を席捲します。
ようやく活況を見せ始めた飲み屋街で、こうした類のお店が、
あっというまに台頭をして、手軽さとも相まって、
短い間に主導権を握りはじめてしまいました。
これらは俗に「ピンク・キャバレー」などとも呼ばれています。
「悪いけど、彼女たちとは、一緒にしないで、頂戴。」
美千子が、憮然としています。
煙草をくわえたまま、怒った目をしてレイコと向かいあっています。
作品名:「レイコの青春」 10~12 作家名:落合順平