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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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水世界

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渇望






俺はどこだろう
俺の体はどこにいるんだろう
俺の涙はどこに消えてしまうのだろう

俺はひとり
ひとりこの手を握りしめて
その感触の不確かさに

恐れ
怯え
憎しみを抱いた

悲しみとはどういう感情だったのだろう
人の心はどこまでも
どこまでも
海のようだ

悲しみに溺れてしまった
歓びに埋もれてしまった

ただ、ひたすらに
笑いつづけた
泣き続けた
叫び続けた

青い色を 色を 飲み込みたくて
飲みこまれてゆく

青い
青い




俺の輪郭はぼやけている
俺の命は音もなくにじんだ
すべて壊れてゆく
ただ、静かに

真っ暗な青空が透き通って残酷にこの世界を見下ろしていた
伸ばした手は何もつかまない
それでも
消えてしまうまで
手を伸ばし続けた

何が欲しいのか分からない
誰に会いたいのか分からない
なぜ悲しいのか分からない

それでも、心が溢れてとまらない
涙があふれて そして 消えてしまう

俺はいなくなるだろう
俺は消えてしまうだろう
俺は青にはなれないだろう

ああ、何も見えない ああ、熱も分からない ああ、苦しみさえもあやふやだ

存在さえいない

ああああああああ

ただ、

ただ、

俺は

渇望











作品名:水世界 作家名:冬野すいみ