水世界
あなたになれない
私はあなたにはなれない
人間は鳥にはなれない
その声は泣いていた その瞳は鈍く微かに光っていた
その声が痛い 痛い 耳を塞ぐ
その瞳が怖い 怖い 目を閉じる
私は救って欲しかった
何か分からない苦しみからどこかへ連れだして欲しかった
逃げたかった
私は私にしかなれない
私はあなたの声を嫌い 瞳を怖れ
その皮膚の感触を嫌悪した
あなたが濁ったもののように見えた
あなたが眩しい憎らしいもののように思えた
鳥の声 遠い果ての向こうから この世の終わりのように響く
どこか遠くへ行けば消えて行ける気がした
けれど、逃げられない
あなたの声は鳥ではない あなたの瞳は鳥ではない
それなのに羨んだ
それなのに憎んだ
あなたはちっぽけな人間
私はくだらない人間
鳥の悲しい羽ばたき
切ないものは美しい
私はあなたにはなれない