水世界
夏の夜
誰もいない真っ暗な夜の中
さびしい心がたたずんでいた
ひとり
何の音もしない
世界を忘れたような夜
街の灯りだけがきらめいていた
まるで嘘の星みたいだ
ひとつ ひとつに人が生きているなんて
夏の空気を肺に吸い込んで
夏の匂いに埋め尽くされてゆく
指先から少しずつさらさらと零れおちてゆく
夏夜の空気に消えてゆく
涙すらこぼれない
真っ暗闇
静寂が溢れていた
本当は こわい
誰もいなくなったみたい
本当は しあわせ
夜はやすらぎをつれてくる
許されたような気がした
嘘でいい
夏の夜