~双晶麗月~ 【その5】完
◆第14章 黒い天使と白い悪魔◆
荒く波打つ海岸の上空で、ボスと思われる狼と、黒い翼を広げたミシェルが戦っている。ミシェルの背後には、ミシェルによって動きを封じられているラシャが、ミシェルの結界の中にいる。両腕の白い翼を大きく広げたままの形で……
私はどうしてもミシェルを助けたくて無我夢中だった。自らに施していた結界を、持っていた剣で割り解除する。火花が散り、ガラスのように割れたカケラは砂地へ落ちて消えてゆく。
【咲夜!何をしているんですか!】
ミシェルが声を荒げて叫ぶ。
【今助けるからな!】
私は荒い波を掻き分け、ラシャが浮かぶ場所へと向かう。
「咲夜!戻ってこいよ!」
後ろから雄吾が痛々しい体を押さえ、追いかけてきていた。
上空にいたミシェルが私の方へ勢いよく飛んでくる。それと同時に狼たちも宙を駆けるようにこちらに向かってくる。
【咲夜!!】
そんな周りの状況も省みず、私は上空にいるラシャの近くまで来ると、そこに向かい思いっきり剣を投げつけた。
まるで私とラシャを繋ぐ糸のように、白い光がまっすぐに飛んでいく。その先には白く光る剣。そのまま剣はミシェルの結界を貫き、ラシャの胸元に当たる瞬間だった。
ラシャは強い光を放ち、白い翼をゆっくりと羽ばたかせた。
【ニズ!今だ!】
私はすかさずミシェルに向かい叫んだ。
ミシェルは戸惑っている風だったが、私に促されるまま強い風を巻き起こす。その風は氷の粒を撒き散らし、海の上空で大きな渦を作る。そして狼たちを巻き込み、海水をも巻き上げる勢いだった。その後、ダークグリーンの光が辺りを照らし、ミシェルの体はみるみるニズホッグへと変化させてゆく。
強い風で荒波がさらに波打ち、それに流されないよう力を入れ見上げる私を、追いかけてきていた雄吾が抱き止める。
「あれが……ニズホッグ……」
雄吾は呆然と見上げていた。
作品名:~双晶麗月~ 【その5】完 作家名:野琴 海生奈