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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その5】完

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◆第14章 黒い天使と白い悪魔◆


 荒く波打つ海岸の上空で、ボスと思われる狼と、黒い翼を広げたミシェルが戦っている。ミシェルの背後には、ミシェルによって動きを封じられているラシャが、ミシェルの結界の中にいる。両腕の白い翼を大きく広げたままの形で……

 私はどうしてもミシェルを助けたくて無我夢中だった。自らに施していた結界を、持っていた剣で割り解除する。火花が散り、ガラスのように割れたカケラは砂地へ落ちて消えてゆく。
 
【咲夜!何をしているんですか!】  
 ミシェルが声を荒げて叫ぶ。
【今助けるからな!】
 私は荒い波を掻き分け、ラシャが浮かぶ場所へと向かう。
「咲夜!戻ってこいよ!」
 後ろから雄吾が痛々しい体を押さえ、追いかけてきていた。
 上空にいたミシェルが私の方へ勢いよく飛んでくる。それと同時に狼たちも宙を駆けるようにこちらに向かってくる。
【咲夜!!】
 そんな周りの状況も省みず、私は上空にいるラシャの近くまで来ると、そこに向かい思いっきり剣を投げつけた。
 まるで私とラシャを繋ぐ糸のように、白い光がまっすぐに飛んでいく。その先には白く光る剣。そのまま剣はミシェルの結界を貫き、ラシャの胸元に当たる瞬間だった。
 ラシャは強い光を放ち、白い翼をゆっくりと羽ばたかせた。

【ニズ!今だ!】
私はすかさずミシェルに向かい叫んだ。
 ミシェルは戸惑っている風だったが、私に促されるまま強い風を巻き起こす。その風は氷の粒を撒き散らし、海の上空で大きな渦を作る。そして狼たちを巻き込み、海水をも巻き上げる勢いだった。その後、ダークグリーンの光が辺りを照らし、ミシェルの体はみるみるニズホッグへと変化させてゆく。
 強い風で荒波がさらに波打ち、それに流されないよう力を入れ見上げる私を、追いかけてきていた雄吾が抱き止める。

「あれが……ニズホッグ……」
 雄吾は呆然と見上げていた。