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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その5】完

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「痛っ…!」
 その直後、私の右肩には激痛が走る。私はすぐに右肩を押さえる。
「大丈夫か咲夜!」
 ニズの背中から乗り出すように叫ぶ雄吾。
 切り離した白い翼と共に海へと落ちてゆく私を、ニズが素早く拾う。
 私はすぐにニズの背中で態勢を整える。
「大丈夫、私は痛くない!私はラシャを助ける!」
 そう言って再びラシャの元へと飛ぶニズの背中から、ラシャに向かい飛び降りる。
 私は両手で力いっぱい握りしめた白い剣を振り上げる。
 ラシャの左肩に剣を振り下ろす、その瞬間だった。

【咲夜…ありがとう…本当に……】
 ラシャはそう言って微かに微笑んだ。

 再び紙切れのように切り落とされたラシャの翼は、私よりも先に海へと落ちてゆく。ラシャの肩から飛び散る血は、ミシェルによって花びらへと変えられる。

【ワタシは……アナタの中から見る世界が楽しかった。まるで本当にワタシがそこで生きている、そんな感覚を味わえた……ありがとう……】

 そしてラシャは泡のように消えていった。

「ラシャ……!」
 私が大声で叫ぶ声も、彼女には届かなかった。

 海面ギリギリまで私が落ちた所に、ニズが勢いよく飛んでくる。海面を風で巻き上げ、私をその背中に乗せる。
「咲夜!大丈夫か!」
 雄吾は放心状態の私を抱き止める。
 私と雄吾を背中に乗せたニズは、近くの海岸まで飛んで行き私たちを静かに降ろした。そして風が大きく巻いたかと思うと、その姿を人の形へと変えた。

「ミシェ…!ラシャが消えたじゃないか!」
 我に返った私は、人型になったミシェルの胸元を掴む。
「大丈夫です。ラシャは消滅したんではありません。あなたがあの剣でフィルグスの封印を解いたと同時に、ラシャは自らの意思でアースガルズに戻ったのです。両腕を元に戻す術士の元へと行ったのですよ。その手配も済んでいます」
「そうか…よかった…」
 私がほっとするのもつかの間、横にいた雄吾がミシェルに問い詰める。
「おい!咲夜はどうなるんだよ!このまま消滅しちまうのかよ!」
「それも大丈夫です。二人は魂を融合した。そしてあの剣で切り離すことが出来たんです。咲夜はもう分身体ではなく、[咲夜]なんです】

 私と雄吾は顔を見合わせ、笑みを浮かべた。