~双晶麗月~ 【その5】完
◆第15章 時よ永遠に◆
恐れながらも飛び掛ってゆく私を、鋭く睨む赤い目のラシャ。そのラシャからは黒い光と白い光が混ざり合っている。
「やぁッ!」
両手に握った白い剣を、ラシャの肩目掛けて振り上げる。ラシャは、自らの体を覆っていた白い羽根の翼を、私に向かいゆっくりと広げた。
【何をしておるのじゃ!術であやつを殺してしまえ!】
しゃがれた声が叫ぶと同時に、ラシャは翼をゆっくりと羽ばたかせた。
そして、悲しい歌を響かせる。
その瞬間私はラシャの肩を切るどころか、腕を引いてしまった。
【殺す……?ラシャが私を…?私がラシャを……?】
私はラシャの翼を切れなかった。そして。ゆっくりと海へと落ちていく中で、[白い悪魔]を見上げる。彼女は、微かに笑みを浮かべている……
【咲夜!】
そのまま海へと落ちていく私をニズは拾い上げる。そして再びラシャの方へと飛んでゆく。私は自分の本体であったラシャを切ることを躊躇(ためら)っていた。
「おい!咲夜!どうしたんだよ!まさかヤられちまったんじゃねぇだろな!」
「ん……ごめん…大丈夫」
【咲夜!ラシャと共鳴させて!彼女を救えるのはあなただけだ!そして咲夜を救えるのは彼女だけ……咲夜!】
私はその言葉で目が覚めた。
そしてラシャを見据え、目を瞑る。ラシャと同じ深層へと、意識を落としていく。
《ラシャ……怖がらないで…飲み込まれないで……あなたは私、私はあなただよ……》
すると声が返ってきた。
作品名:~双晶麗月~ 【その5】完 作家名:野琴 海生奈