【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら
ぼりぼりシャツの中に手を入れて体をかいた操が昨日確かに隣でよだれをたらしながら寝ていた京助の姿を探す
「…便所か?」
カーテンを通して部屋に入ってくる朝日は柔らかく時計を見ると午前六時半
「珍しいこともあるもんだ」
伸びをして布団から抜け出した操が立ち上がるとカーテンをあげた
網戸越しから風が入り寝癖の髪を撫でる
「…スイカ食いてぇなあ」
ボソッといった操が欠伸をして踵を返した
部屋からでると足元に擦りよってきた二匹の犬
「あー飯かー…ちょい待てよ」
尻尾を振りながら歩く操についていく二匹に操が笑いかける
「こらこら踏むぞコマ、イヌ」
「わんっ!!」
名前を呼ばれた二匹が飛び上がって返事をした
「守れなかったんだやな」
ぐっとゼンが拳を握った
「思い出したんだやな…操がいたこと操を守れなかったこと」
ゴも同じく拳を握りしめる
「だから今度は何がなんでも」
二人揃って顔を上げると白い布の人物を睨む
「「栄野の全てを守り通す!!」」
ゼンゴの声がざぁざぁという雨の中響いた
作品名:【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら 作家名:島原あゆむ