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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その4】

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 ミシェルはため息をつく。
「あなたが開放されるには[時期]を待たなければいけないということ、狼の一族は誰も何も言ってませんでしたか?」
「知ってるわよ。だから何なの?ほら、ワタシはこうして開放されたわ」
「これはまだ[完全開放]とは言えません。むしろ術が強化されてる状態だ」
「術が強化…ですって?」

「あなたは開放の時期を早めたために、狼一族の術が強化されているんですよ。あなたのその[負の思念]がその証拠です。きっと狼一族も先手を打ったつもりでしょう。もし今のままの状態で能力を使い続ければ、あなたは[負の思念]に飲み込まれる。あなたは順序を間違えたんです」
「……!」
「僕はフォルセティの命でずっとあなたを開放することを考えていた。そして、あなたの分身体である咲夜がこの世界に生まれたことを知った。分身体である証に、フィルグスの封印を右肩に付けてね。しかも[守護]としてフィルグスが咲夜の元にいた。僕は、刻々と近付く[時期]を待ち、咲夜を見守っていた」

「アナタがフィルを消したせいで、狼一族の動きは活発になったわ」
「それは計算済みです。[時期]があと数日に迫った今、少しでも多くこの世界に呼び寄せ、開放の時は何も邪魔者が出てこないようにしたかったんです。そしてきちんとした形であなたが開放されれば、それであなたを助け出すことができると思っていた」

 ミシェルは…私を護るためではなく、ラシャを助け出すために私の所へ来た……?
 そっか私……ラシャの[分身体]だもんな……
 [任務]か…………ばかみたい…私……何を期待していたんだろう……


「僕は咲夜の状態を見ながら、その[時期]を待っていた。だけど…そのための準備段階で咲夜を深く傷つけてしまった」
 ミシェルは軽く握っていた手に力を入れる。

「僕は……とにかく咲夜を護ろうと決めた。せめてあなたが開放されるまででも…」

 『開放されるまで……です』『あなたを護るために来た』
 私に言ったあの言葉は……そういうことだったんだ……
 所詮私はラシャの分身体……ミシェルが本当に助けたいのはラシャ……
 私じゃない…………