御影山編
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「カレン〜〜〜〜!」
「水那〜〜〜〜!!」
社長から連絡を受けていたらしいカレンは、美容部のドアを開けた私に飛びついて来た。
「あんた御影山社長の手伝いするんですって?」
「そうなの、どの部署に行くか決められなかったから、社長が手伝えって」
「あんた、つくづく社長と縁があるわね、あのバーといい……」
「わー! もう、あの事は言わないでっ!」
カレンの口を塞ぐと、慌てて他の社員の人たちに挨拶をする。
一通りの挨拶を済ませると、カレンは私を奥の方の席へと移動させた。
少し私を待たせた後、カレンは様々な化粧品を持って現れた。
「よいしょっと」
ドカッと化粧品の山を机に下ろす。
「これが過去1年以内に出たうちの商品」
「これ、全部?」
「そー。凄いでしょ? ぜーんぶテーマとか見せ方が違うの。当然売り方だって違う」
「ほへ〜」
思わず間抜けな声が出てしまった。
「で、今回はグロスを出すわけなんだけど――これが新製品のサンプルね。水那だったらどの色を選ぶ?」
メインのコーラル系の他にもピンク系が2色とやベージュにゴールド、やや青みがかったクリア。また真っ赤なんてのも用意されている。
「うーん……私ならこっちのピンクかなぁ」
「ふふっ。なるほどねー。そっちはブルーベースのピンク。ちょっと付けてみよっか?」
そう言うとカレンはテキパキと手を進め、あっという間に私の唇に色を載せた。
「どお?」
「うーん……」
正直、あんまり似合ってない気がする。なんでだろー、見た感じは凄く可愛いグロスなのにな。
「じゃ、今度はもう一個の方のピンクつけてみよっか」
そう言うが早いかカレンは私のグロスを落とし、ベースを整えると再び色を載せた。
「あ、こっちはすごくいい」
鏡を見た瞬間、思わずそんな風に言ってしまった。