御影山編
「待って下さい、社長」
「ああ、お前か。どうだ、少しは新製品について分かったか?」
「はい、すごく楽しみになって来ました!」
「そうか。俺はお前がどうやってこの商品を大ヒットさせてくれるのかが楽しみだ」
「う……」
本当にその通りだわ。どうやって大ヒットさせるのよ。社長の手伝いをしてて、何か商品のヒットに繋がる仕事ってあるの!? もしかしたら、一番難しい仕事を選んでしまったんじゃ……。
「社長、あまり葉月さんをいじめないで、先ほど話していた事をお伝えください」
「ちっ」
川島さんにたしなめられ、社長が舌打ちをする。エレベーターのドアが閉まると、社長は壁に体を預け腕組みをした。
なんだかんだ言って、社長ってやっぱりイケメンなんだよね。性格が俺様すぎるけど。
「葉月、お前にはここと開発センターとを行き来してもらう。後は市場調査だ」
「開発センター?」
「商品の開発部の部署は社内にあるが、実際に商品を作っているのは別の場所にある」
「そうなんですか?」
「科学的にどんな成分が化粧品として向いているか、アレルギーレベルが低いか、設備の整った所じゃないと作れないからな。それで、新製品の試作品の改良点などをお前が指示しろ」
「はあっ!?」
びっくりした、私が試作品の改良点を指示ですって!? そんなの無理に決まってるじゃない!!
「だから、市場調査をしろと言った」
「―――あ」
「試作品を持って、うちの販売店に行ってお客にアンケートを取るんだ。お前一人でやるように。それを集計して、改良点を考えろ」
「分かりました。でも、あの、私一人でそんな大事を決める訳にはいきませんから、社長に改良点を見て頂く事は出来ますか?」
「まあ、いいだろう。俺も新商品が駄目だったら困るからな、それくらいは手伝ってやる」
なんかすごく偉そうだけど、大体この人の会社なんだからそういう計画書とかって社長が見てGOサイン出すもんじゃないの? 商品がヒットしなかった時の為に私を利用してる?
「また何かいらん事を考えてるようだが、今から美容部に行け。カレンの所で化粧品について色々教えてもらって来い」
「はい、分かりました!」
そうよね。取りあえず私に足りないのは知識よ! 知識あっての度胸と応用力よ! とにかく化粧に関する勉強をして、ヒットに繋げるように考えなきゃ!
社長室を後にした私は、カレンに会える嬉しさに軽い足取りで美容部へと向かった。