御影山編
「おい、葉月!」
「はいっ!?」
「お前、この男にグロスの話しをしたのか!?」
「は、い……」
「っ……。どういうつもりだ? お前、そこまでしてうちに勝ちたいのか?」
「そこまでして? 別に僕は卑怯な事をした覚えはないけど? 勝手に勘違いしてペラペラとしゃべったのは葉月さんだ。僕達はその情報を活用させてもらっただけ。それなのに御影山、お前が怒るのは筋違いだろう?」
「はっ! そう言う事か、うちの情報が秀麗に漏れてたのは、葉月からだった。という事か」
「ええええっっっっ!?」
何で!? どうして!? 私の所為? 私の所為なの!?
「葉月さん、ごめんね。別に騙すつもりじゃなかったんだけど」
「こいつは秀麗の社長、白波瀬陽だ」
「しゅっ、秀麗の社長っ!?」
嘘よ! だって、白波瀬さん、美成堂より弱小だって……あれって、私から情報を聞き出す為の嘘? 優しくしてくれたり励ましてくれたりしたのも、全部嘘だったの?
どうしよう。もう、全然頭が追いつかないよ―――
「僕も会社の為に色々とやらなきゃいけなくてね。利用出来るものを利用した。キミだって今までそうしてきただろう? それをそんなに怒るなんて、御影山らしくないな」
「何とでも言え、今回、うちはどこにも負けるつもりは無い。もう商品説明が始まる、お前の顔など見たくない、どこかへ行け」
「―――もしかして、僕が葉月さんを利用したのがそんなに気に入らなかったのかな?」
「黙れ……」
茶化すように言った白波瀬さんの言葉に、御影山社長は今まで見た事もないほどの鋭い視線で睨みつけ、低い声で凄んだ。
それを受けて、白波瀬さんは肩をすくめ、
「まあ、どうでもいいさ。これ以上綾人をからかうと殴られそうだからそろそろお邪魔しよう。それじゃあね、葉月さん」
「えっ……あ……」