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御影山編

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***

 昨日の映像をリピートしているようなロビーでのやりとりを見ながら、私は社長と一緒にエレベーターに乗り込んだ。

 はあ……

 もう私ってば社長の奴隷のようなものね。
 心の中でため息吐いてないと、きっとまたバカにされるから何度も心の中でため息を吐き出す。
 社長の手伝いなんて、全然想像つかないや。コピーしてこいとか、お茶入れろとか? あれ買って来いとか書類持って来いとか? ―――あれ? なんか出来そうじゃない? もしかして営業や写真や制作よりもむしろラッキー!?

「お前、今社長の仕事が営業とかより楽、と思っただろう」
「えっ!?」

 呆れたような口調で社長が言う。
 何で分かったの!? 私口に出したの、もしかして!?

「どうでもいいが、お前、あまり顔に出さないように気をつけろ。もし社外でライバル社の人間に会ったら顔だけで色々バレそうだ」
「き、気を付けます」

 顔に出てたのね。なんか恥ずかしい……
 決まりが悪くて床を見つめていると、最上階に到着した。

「こっちだ」
「はい」

 言われるままフロアに降り、社長の後に付いて行く。そう言えば社長室は昨日回らなかったな。なんだかすごくフロアが静か。

「ここが俺の仕事場だ」

 重厚なドアを躊躇無く開けると、入ってすぐ入り口に道を作るよう向かい合って机が並び、直ぐさま女性が二人立ち上がった。

「おはようございます、社長」
「ああ、おはよう。川島は来ているか?」
「はい、隣りです」

 社長の問いに答えた女性が、私を不審そうに見た。それに気づいた社長がふっと笑う。

「こいつは葉月水那だ。先日話していたやつだ。今日から俺の手伝いをさせることになった、よろしく頼む」
「よろしくお願いします!」

 社長に頭を押され、私は慌てて挨拶をする。それに苦笑するように女性がよろしくと答えた。

「おい、こっちだ」

 次は腕を引っ張られ、次のドアへと入る。

「あ」

 そこには昨日私を案内してくれた社長秘書の男性が座っていて、すぐに立ち上がると頭を下げた。

作品名:御影山編 作家名:有馬音文