明月院編
「じゃ、今度はもう一個の方のピンクつけてみよっか」
そう言うが早いかカレンは私のグロスを落とし、ベースを整えると再び色をのせた。
「あ、こっちはすごくいい」
鏡を見た瞬間、思わずそんな風に言ってしまった。
「でしょ? 同じピンクでもこっちはイエローベースだから」
「イエローベース?」
「そ、通称イエベっていうんだけどね。水那はパーソナルカラーって知ってる?」
「? 聞いたことあるような……ないような……」
「人にはね、それぞれ似合う色って言うものがあるの。季節と同じで4パターンで主に分けられるんだけどね」
「春夏秋冬ってこと?」
「そ。肌の色や髪の色とかで判断するんだけど、水那はオークル系の肌に明るいブラウンの髪。目も日本人にしては明るいブラウンでキュートなイメージ。だから春に分類されるの」
へぇ〜……そんなのがあるんだーっと思わず感心してしまう。
「季節ごとに似合う色が違うの。で、水那は肌もイエベだし、ブルべのピンクよりもイエベのピンクを足した方が、より明るく見えて馴染みやすいってわけ」
「へぇ〜」
そんな事、今まで考えた事もなかった。
「他にもいろいろあるんだけど――そうそう、この本なんかは参考になると思うわ。貸したげるから持ってきなよ」
「いいの?」
「うん、うちの新人教育にも使う本だから。化粧品について、分かりやすく説明してあるし、これを知っておけばうちの製品を売り込む時にも専門用語とか分かっていいでしょ?」
「有難う!」
素直に喜ぶ私を見て、カレンは思わず笑みをこぼす。
「ふふっ。じゃー、今日はこの化粧品の山を使ってお勉強ね! あんたの所じゃ商品の説明をすることは無いと思うけど、やっぱり商品がどういうものが知っておく方がうんと曲を作るときの参考になると思うわ」
「うん! がんばるぞー!」
さっきまで少し落ち込んでいたのはどこ吹く風。我ながらゲンキンだなぁなんて思うけど、よっし! 頑張るぞ〜!