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明月院編

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 進行役の言葉に、市来さんが立ち上がる。春日さんと違って市来さんって本当に大きいよね。男の人! って感じがする。
 そんな市来さんは少し眠そうな目で新製品のコンセプトをもとに、どういった感じの写真を撮るか簡単に説明をした。いくつか候補の写真を撮って、その中から選ぶらしい。腕が良いカメラマンでも、会社のGOサインが貰えなきゃダメなのね。本当にひとつの商品を作って店頭に並べるまでにこんなに多くの過程を経て、多くの人たちが関わって努力しているんだなあ。なんだかすごい、感動しちゃってる私。
 市来さんの次は音楽制作部の明月院さん。ゆっくりと立ち上がって、その場でマイクを持って静かな声で話しはじめた。

「こちらは最初にサンプルを頂いた商品のイメージから、テレビやラジオ用の音楽と店舗で流す音楽を作ります。特に要望がなければインストにする予定です。何かあったら連絡をください」

 こちらは相変わらず無愛想にぼそぼそとしゃべっている。綺麗な顔しているから、余計に不思議な雰囲気を醸し出すんだよね。
 商品のイメージから音楽を作るって、すごく大変そう。私じゃ全然思いつかないけど、明月院さんは浮かんじゃうんだろうなあ。なんかそれだけで尊敬。
 一通り説明が終わった所で、社長が立ち上がった。

「今回の商品はとても重要なものとなる。我が美成堂が国内、アジアだけでなく、ヨーロッパやアメリカなど広く海外へと進出する足がかりとなるという事を全員肝に銘じ、それぞれの仕事に全力を尽くしてもらいたい。ライバル社との厳しい商戦になるだろうが、君達を信じている。以上」

 社長の声がしんとした会議室に響き、全員が一斉に立ち上がった。私も急いでそれに倣う。

「それでは今日の会議はここまでとなります。次回の会議は一週間後です。よろしくお願いします」

 進行役の締めの言葉に、それぞれが会議室を後にし始めた。

「あ、待って下さい」

 さっさと会議室を出て行く明月院の後を追いかけて、私は先ほどの会議で感じた事を話し出した。
作品名:明月院編 作家名:有馬音文