明月院編
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「おはよう」
有名人の挨拶にもそっけない明月院さんは、後ろに着いて来ている私を指差し、
「今日は見学がいるから」
と言って、目の前のドアに入ってしまった。
うう、まさかの放置プレイ……
「どうも。キミ、聖さんの彼女?」
「えっ!?」
TAKAが話し掛けて来る。
どーしよう、めちゃくちゃ緊張する! 本物だよぉ〜! 後でカレンに報告しなくちゃ! じゃなくって、
「いえ、ち、違います。あの、会社の部下で……」
しどろもどろで取りあえずそれだけ言うと、TAKAはニッコリ笑った。
「そうなの? 聖さんが女の子連れて来るなんて初めてだから、彼女さんかと思った」
「そ、そうですか―――」
「俺達のバンドはキーボードがいないからさ、曲をレコーディングする時は聖さんに弾いてもらってんの」
「はあ、そうなんですか」
「バンドだけ先にレコーディングし終わってて、聖さんと俺だけ今日レコーディングなんだ。別録りしないと聖さん忙しいし、スケジュールが会わないんだよね。今日中に完パケしないともう、ギリギリでさ、……って、あれ? もしかしてキミ、こういう所くるの初めて?」
「は、はぃ」
さっきからTAKAさんが言っている言葉の意味が全然分からないのよっ!
もう、頭の中はハテナだらけで、きっと顔もとんでもない事になってるはず。
「へえ〜。そうなんだ。じゃあもしかして俺のことも知らない、とか?」
「いいえっ! 知ってます。CD持ってます……」
「ホント!? 嬉しいな、ありがとう。せっかくだから、聖さんが弾く所じっくり聞いて行きなよ」
「ありがとうございます」