明月院編
「はあ〜。楽しかった! 白波瀬さんって物腰が柔らかいせいかすごく話してて気持ちが穏やかになるなあ。明月院さんは表情がいつも暗いし、大きな声出すとすぐ怒るし、結構気を遣うのよね……」
家に帰ってベッドに横になった私は、先ほど白波瀬さんと一緒に過ごした時間を振り返っていた。緊張する仕事の後にリラックスして食事が出来たから、明日も頑張ろうって気持ちになる。
ゴロリと反対に寝転がると、明日レコーディングに着いて来いと言った明月院さんの顔を思い出す。
本当に失敗ばっかり。なのに明日着いて来いだなんて、一体何考えてるのかしら? う〜ん、何を考えているか分からなさすぎる! 仕事も明月院さんの扱いも、分からない事だらけだわ!!
「―――あ〜やめよ、使えないというのは事実だし、まだ何も出来ないのも事実だもん。でも、絶対、明月院のお手伝いが出来るようになるんだから。そして新製品がヒットしたら『頑張った』って褒めてもらうんだ! よし、明日は明月院さんにどんな事をすれば役に立てるか、勇気を出して聞いてみよう」
それから、何か雑誌や専門書を買って……でも専門的な単語が出て来たらそれ用の辞書とかもいるよね……。どうしよう、ああ! どうして私は子どもの頃、親にピアノを習いたいと言わなかったのかしら!!
って、また色々考えてる! また寝不足で怒られちゃうよ、早く寝てコンディションを整えなきゃ。
そうよ、まずは睡眠! よーし、明日も頑張るぞ!