明月院編
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「カレン〜〜!」
カレンのいる教育部に向かう途中でカレンにメールをしておいたら、カレンは廊下で既に私を待ってくれていた。
「お疲れ〜ってどうしたの? 今日の顔ひっどいわねぇ」
「うっ。そこでお願いがあるの!」
私は白波瀬さんとの約束をかいつまんで話すとカレンは呆れ顔で私を見下ろした。
「はーっ、あんたねぇ、男と遊んでる場合?」
「遊ぶっていうか……」
確かに遊んでる様に見えるだろうし、危機感がないように思われるのも無理はない。
せっかくのチャンスなのに何してるの――って。でもそうじゃなくて、そう思われても仕方ないけど、そうじゃなくて。自分と同じような立場の人と、共有したいっていうか。そうしないと重圧に負けてしまいそうな気がするっていうか――そんな正直な気持ちをポツリ、ポツリと吐露していくと、カレンは一つ大きく息を吐いた後、私の頭をそっと撫でてくれた。
「分かった。しょーがないな、水那は」
カレンがそっと微笑んでくれている。いつものカレンだ。昔から私を助けてくれる優しいカレン。
「よし、じゃあちゃちゃっと直してあげるから、気を付けて行ってくるのよ。それと、そんなにイイ男なら今度ちゃんと紹介しなさいっ」
「はぁい」
カレンの手が動くたびに、私の顔がグッと華やかになっていく。くまもくすみも消えていって、夕方なのに朝みたいな肌質に変わる。
「よし、と。我ながらさすがな出来栄え! これならその彼も好印象間違いなし!」
「有難うカレン〜〜〜!」
鏡を確認してすっかり爽やかな顔色に変化した自分を見つけると、思わずカレンをギュッと抱きしめた。
「はいはい、って時間はいいの?」
「あー! もうこんな時間!? ごめんね、カレン! 私行ってくる〜! 本当にありがとね〜〜!」
待ち合わせの時間が迫っている事を知り、今度は駆け足。我ながら慌ただしくて申し訳ないことこの上ない。どうか間に合いますように!