春日編
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「水那〜〜〜〜〜!」
教育部へとやって来た私たちは、部屋に入るなりカレンの熱烈歓迎を受けた。
「ちょっとカレン、苦しいっ」
「あら、ごめん。つい……あら、春日君お疲れさま」
「お疲れ様です……カレンさん」
私とカレンの様子に、春日さんは少し驚いた様子だ。それに気づいたカレンが、私の頭をかき回しながら笑顔で言う。
「あ、この子、あたしの幼なじみなんです。色々と教えてあげて下さいね」
最後の「色々教えて下さいね」という言葉に少し口元を引きつらせながら、春日さんは小さく頷いた。きっと「カレンさんの幼なじみ? 何だよ、ますます面倒だな」とか思ってるんだろうなあ。
なんて一人物思いにふけっていると、春日さんがカレンの方を見ながら頭を下げた。
「今日はよろしくお願いします。それと……葉月さんに新製品の事を教えてあげてください」
「オッケーよ! それじゃあ、春日君と担当の子達は打ち合わせをして。あたしは水那に色々とレクチャーしてるから」
そう言ってカレンは私を引っ張りながら、書類や化粧品を持って立ち上がった綺麗な女性達に「この子水那。よろしくね〜」と、人の頭をぐいぐい下げて奥の方の席へと移動させた。
本当に痛いってば! 蓮司って呼ぶからねっ!?
「はいはい、膨れっ面しな〜い。ちょっと待っててね」
少し私を待たせた後、カレンは様々な化粧品を持って現れた。
「よいしょっと」
ドカッと化粧品の山を机に下ろす。
「これが過去1年以内に出たうちの商品」
「これ、全部?」
「そー。凄いでしょ? ぜーんぶテーマとか見せ方が違うの。当然売り方だって違う」
「ほへ〜」
思わず間抜けな声が出てしまった。