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春日編

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エピローグ



  
 大学も卒業し、会社務めももう1年が過ぎようとしていた。営業の仕事にも随分慣れて、下っ端ながらに頑張っている。

「ふああ……」

 とは言ってもやっぱり失敗する事もある訳で、今日は取引先のクレーム対応で残業中。
 もう10時か……お腹空いたなあ。
 ぐうーと鳴るお腹は健康な証拠だけど、電話待ちの私にしてみればちょっぴり恨めしい音だったりする。

「まだいたの?」

 営業部の入り口から聞こえてきた声は私の恋人である春日雅のもので、思わずニヤケ顔。
 でもバレると色々うるさいから、机に突っ伏して誤摩化す。

「まだ相手先からの折り返し電話がかかって来ないんです。はあ……」
「まあ、水那のミスだからちゃんとフォローしなよ。じゃあ僕は先に帰るから、お疲れ」
「えっ!? 帰るんですか!?」

 一応恋人で上司なんだし、そこはそれ、フォローしてくれたっていいんじゃないの!?

「何? 僕明日朝イチで出張なんだけど」
「――――そうでした」

 忘れてた。雅さん、明日から北海道に3日間出張なんだよな。寂しいな。
 ふっと私を見て笑うと、雅さんが近づいてきた。

「はいこれ」
「これ?」

 机の上に置かれたのは会社の近くにある喫茶店の紙袋で、中を開けるとサンドイッチとホットコーヒーが入っていた。

「僕がいなくて寂しいのは分かるけど、そんな顔しないでよね。それ食べて頑張って。それに、水那一人残して行くのは水那の事信用してるって事なんだから」
「雅さん……」

 どうしよう、すっごく嬉しい。

「じゃ、後で電話する」

 チュッ

 と、去り際私のおでこにキスをすると、雅さんは相変わらずの可愛らしい笑顔で営業部を出て行った。
 キスをされたおでこをさすりながら、ホットコーヒーを取り出して一口飲む。

「うわ〜。愛の味がする」

 丁度鳴り出した電話を勢い良く取ると、私は自分のやるべき事に集中した。
 いつでもあの人は私のやる気を引き出してくれるんだ。
 
 そんなあなたが大好きです。




END

作品名:春日編 作家名:有馬音文