春日編
すごく綺麗なマンションで、部屋もきちんと片付けられている。男の人の一人暮らしにしては広過ぎる気がするけど、窓からの眺めがとても綺麗だ。
「すごいなあ、こんな高級マンションに住めるくらい、稼いでるんだ。テーブルもちょっとアンティークっぽいし、本棚とか机もセンス良い感じ。台所も広くて片付いてるし、すご〜い。彼女さんきっとすごくマメな人なのね……おっと、保険証と着替えっと」
メモに書いてある引き出しに保険証を見つけ、次は申し訳なく思いながら着替えをバッグに詰める。
男の人の下着に触るなんて、お父さん以外で初めてだよ。うう、何か見ちゃいけないのに見てしまう……お父さんのと違ってお洒落なんだなあ。今度お父さんにお洒落なパンツプレゼントしてあげよう。
―――あ〜もう! 何でこんなにやらなきゃいけない事から脱線しまくってるのよ!!
春日さんの彼女さんって、どんな人なんだろ? 春日さんが可愛らしい顔立ちだから、お人形さんみたいにふわふわ柔らかそうな人かな? それともバリバリ仕事をこなして春日さんとも対等に戦うようなキャリアウーマンみたいな人かな? ――まあ、間違いなく面食いだろうから、彼女さんは美人に違いないわね。
……なんで私自分で考えててちょっと傷ついてるの? べ、別に春日さんはただの上司で、私の事を邪魔者の虫けらくらいにしか思ってないのに。そりゃあ確かに顔は可愛いし仕事もできるけど、無理無理無理! ……はっ!? ってか私のバカ!!
突如浮かんだ思いを振り払うように、私はブンブン! と大げさに頭を降った。――ちょっとクラクラする。
「とにかく、早く病院行かなきゃ!」
荷物をまとめ、私は急いで春日さんのマンションを出た。
何だかあまり長居していると、余計に春日さんやまだ見ぬ春日さんの彼女の事とか、色々と考えて傷つきそうな気がした。