Chat Noir
ゆっくりと、深呼吸をした。
そして、右手で二本指の手刀を作り、左手は後ろに回し印を結んだ。
自分で聞き取れるくらいの小さな声で偈を唱え、意識を集中。
丹田から両手の指先にポテンシャルを移動させた。
何やら術を発動したのは、人でなくても分るらしい。
異色虹彩の持ち主は妨害する事なく小首を傾げて、こちらを注視していた。
これから起きる事を、ワクワクしながら待っているようにも見えた。
全てを察したのか、由香里は既に日差しを背にして待機していた。
対象から5~6m程離れていたが、捕らえるだけの作業である。
彼女なら、片手にティーカップを持っていても出来ただろう。
少女は、私の右斜め後ろ45度の位置にいた。
左斜め前45度の角度には自信があったので、少し残念だった。
彼女は、ギリシア語からヘブライ語にスペルを変えた。
本気を出したのが分った。
私が先に、ヤツを止めないといけない気がした。
嫌な予感は……いつも現実となる。