Chat Noir
ほとんど同時に由香里も跳んだ。
空中の同一直線上。
馬上槍試合の一騎打ちを見たような気がした。
だが、この勝負は既に結果が見えていた。
リーチに勝る彼女が圧倒的に有利なのだ。
3秒後には、首根っこを捕まえられた黒い影の正体が分るだろう。
背後から人の動く気配がした。
振り向くと……白と黒の少女が、まだバスタオルを抱いたまま立っていた。
何かを呟いていたが、また聞き取れなかった。
「えっ!?」
由香里の声で戦場に視線を戻すと、不思議な事が起きていた。
彼女の手には、だらしなく四肢を伸ばした生き物が……いなかった。
「マスター、見た!?」
地球を救うヒーローの、変身するところを見逃したような気分になった。
黒い生き物は、元の戸棚の同じ場所にいた。