Chat Noir
季節は、春と夏の間。
彼女が訪れたのは、昼の片付けが終った頃だった。
厨房のシェフと助手が裏庭で何本目かのタバコに吸い付き、
パートの主婦が皿洗いをしながらウェイトレスと世間話をしている時だ。
雑多な匂いが、新鮮な空気と入れ替わっていた。
風に吹かれてドアが開き、閉じたような気がした。
顔を上げると、小学生くらいの女の子が、こちらを見ていた。
セミロングの黒髪に白いリボン。
白い肌に黒いワンピース。
そして、両手で抱きしめるように白いバスタオル。
白と黒。
彼女を表すには、この二色で済む。
唯一ピンク色の唇が、小さく動いたように感じたが聞き取れなかった。
慣れない笑顔を浮かべながら、ゆっくりとカウンターの奥からフロアに出た。
驚かせないように移動するのは、細心の注意と勇気が必要だ。
もしも、彼女が叫び声を上げたら……
私は気を失ったに違いない。
彼女が訪れたのは、昼の片付けが終った頃だった。
厨房のシェフと助手が裏庭で何本目かのタバコに吸い付き、
パートの主婦が皿洗いをしながらウェイトレスと世間話をしている時だ。
雑多な匂いが、新鮮な空気と入れ替わっていた。
風に吹かれてドアが開き、閉じたような気がした。
顔を上げると、小学生くらいの女の子が、こちらを見ていた。
セミロングの黒髪に白いリボン。
白い肌に黒いワンピース。
そして、両手で抱きしめるように白いバスタオル。
白と黒。
彼女を表すには、この二色で済む。
唯一ピンク色の唇が、小さく動いたように感じたが聞き取れなかった。
慣れない笑顔を浮かべながら、ゆっくりとカウンターの奥からフロアに出た。
驚かせないように移動するのは、細心の注意と勇気が必要だ。
もしも、彼女が叫び声を上げたら……
私は気を失ったに違いない。